壁撃ちホッチキス MAXミニタッカー

臨床とは全く関係のない文房具である.

麻酔科医も他科の医師と同様に学会での発表は義務のようなものである.医局の教授から,あるいは病院の上司から,今度はあの演題をその学会で発表しなさいと指示される.指示する方は気楽だが発表する当の本人にとっては負担である.医局や病院の指揮高揚のために,別に発表しなくてもいいような演題をひねり上げなければならない.かくして雨後の筍の如く学会はその数を増すばかりである.

その学会では口演とポスター掲示というのが二大発表形式である.従来はポスターは学会主催者が用意した画鋲でボードに張り付けていた.画鋲は普通紙コップに入れて支給されるので,摘もうとすると一度や二度は指に刺さってちくりとする.高いところに張るには椅子にのって,左手でポスターを押さえながら右手で画鋲を差し込む.ボードが結構硬いので,反動で後ろにひっくり返りそうになる.10枚足らずのポスターを張り終えただけで利き手の親指と人差し指が赤くなってなかなか痛い.ああどうして私はこんな目に会わなければならないのかと再び上司の顔をにくにしげに思い出す.

ところが本品を使えばあっと言う間にポスター張りは完了である.ポスターの上からガンガンと打ち付ければいいだけなのだ.麻酔科関連の学会で普及するまでは,その大きな発射音は貴方を目立たせるかもしれない.演題の内容は貧弱でも学会は目立った方が勝ちである.質問も研究の内容でなく本品の入手先に集中する.そして貴方の名前は強烈な印象を残して学会が終わる.まさに一石二鳥の学会グッズではないか.

昨年の日本臨床麻酔学会総会では,麻酔ディスカッションリスト一同の手でラボナール製造中止撤回を求める展示活動が行われた.本品は数百枚にのぼるポスターをガンガンという小気味よい音とともに短時間で張り終えた.ラボナール復活を影で支えた逸品である.なお,後始末のためには本品以外にステープル針用のリムーバーを用意することをお薦めしたい.今後の学会での普及を予想する.